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シリーズで少年からスターに

56年10月17日、日本シリーズで巨人を破り日本一を果たし乾杯する(左から)西鉄稲尾、豊田、中西、河村
◇全6戦登板

 西鉄は巨人との初の日本シリーズの初戦を落とした。シリーズ前の下馬評では絶対的に巨人有利だった。巨人はすでに完成されたチームであり、若手主体の西鉄がどこまで食い下がれるか、といった興味程度だったようだ。案の定、巨人はエース大友の好投もあり、初戦に勝利した。だが、終わってみれば4勝2敗の完勝で日本チャンピオンに輝いたのは西鉄だった。「王者」をギリギリと締め付け、逆転Vの原動力となったのはスーパールーキー稲尾だった。

 稲尾は第2戦に先発登板した。初回、立ち上がりを攻められ1失点したものの、2、3、4回ときっちり無失点でしのいだ。5回に相手先発の別所にソロ本塁打を被弾し、1点をリードした4回2/3で降板した。あと1人打者を抑えれば勝利投手というところだったが、5回途中2失点とゲームをつくり、打線の爆発を呼び込んだ。チームは6-3で勝利。1勝1敗のタイとして地元平和台に戻った。

 「初めての日本シリーズで結果的に3勝を挙げたんだが、あれが大きな自信につながった。相手は巨人だったし、三原さんと水原さんの因縁もあって盛り上がったシリーズだった。その大舞台で活躍できたんだから、これ以上の自信はないよな」。

◇1人で3勝

 平和台での第3戦はリリーフ登板。3点ビハインドの場面でマウンドに行ったが、8回のイニングを抑えると、その裏に西鉄打線が奮起した。豊田の2ランと稲尾自らの右前タイムリーなどで4点を挙げ逆転に成功。最終9回をきっちり無失点で抑えた稲尾にシリーズ初白星がついた。続く第4戦も先発島原を4回からリリーフ。6回を散発2安打の零封で4-0の勝利。島原との完封リレーを達成。王手をかけた。

 「結局、初の日本シリーズは勝ち星もそうだけど、6試合全部に登板している。シーズンと同じでガムシャラに投げた感じだな」。

 第5戦にチームは負け、地元での胴上げはなくなったが、再び戻った敵地・後楽園であっさりと初Vを決めた。第6戦に先発した稲尾は巨人打線を散発4安打、岩本のソロ1発だけの1失点完投で胴上げ投手となった。

 この年の経済白書は「もはや戦後は終わった」と宣言したが、プロ野球の世界では超新星の登場で、西鉄ライオンズ黄金期の幕が開いた瞬間でもあった。稲尾は日本シリーズで最優秀投手の称号を手にした。期待もされていなかったプロ初登板から約7カ月。別府の少年は球界のスターにのし上がった。【佐竹英治】

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